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    【書評】企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔

    著者の松井さんより献本して頂きました。ありがとうございます。



    前作の僕がアップルで学んだこと 環境を整えれば人が変わる、組織が変わるでは、Appleの内部が生々しく描かれていましたが、本作では、さらに一歩踏み込み、Appleのような巨大多国籍企業がそのように世界を支配しているか、という実態が描かれています。実際に内部にいた方がこのような書籍を書くことが多くはありませんので、将来海外で働いてみたい方や、外資系企業の実態を知りたい方は必読です。

    この書籍で特に注目して頂きたい点は3つです。まず第一点目は、アメリカを中心とする巨大多国籍企業(帝国)が、国家を揺さぶる力を持つ点を、実際にその様な組織の中にいた方が、実体験を踏まえて生々しく描いているという点です。軍事や国際的な規制の枠組み、国際政治などにおいては、引続き国家が圧倒的な力を持ちますが、1996年にイギリスの国際政治学者であるスーザン・ストレンジが著書「国家の退場」で描いた先駆的な枠組みが、益々強力なものになっているわけです。Appleだけではなく、食品企業、石油会社など様々な帝国が世界を支配している実態には身の毛がよだちます。



    第2点目に注目すべきなのは、そのような帝国が「仕組み」により収益を上げているということを赤裸々に描いている点です。小さな本社機能を税金のかからないタックスヘブンにおき、世界中から支配の「仕組み」を作ることができる人材をかき集めて、コストの高い本社機能の規模は最小限にし、オペレーションや開発、製造など定型化できる業務の多くをコストの安い土地に行い、最小限のコストで最大限の効果を産んでいます。つまり、このような帝国の強みは「仕組み」作りなわけです。

    帝国が「仕組み作り」をうまくやることで強大な力を発揮しているという点は、アメリカの社会学者であるイマニュエル・ウォーラーステインが提唱した世界システム論の裏付けになるといえるでしょう。世界システム論とは、ヨーロッパの大航海時代がもたらした世界的交易を起点に、世界は政治経済・社会的差異を包含して機能する一つのシステムであると説く視点です。現代の資本主義の発展の基盤は国民国家にはなく、政治的にも経済的にも支配的な「中核」的な土地と、中核に経済的に従属する「辺境」的な土地からなり、さらに、そのどちらの要素も持つ「半辺境」的土地があるとしています。

    「中核的」な土地は、政治的にも経済的にも強大な支配力を持ち、「辺境」から安価な材料や労働力の提供を受けて生産を行うのです。そして、このシステムは崩れることがないばかりか、「中核」が「辺境」から搾取をすることで益々拡大していくのです。つまり、誰かが特をして、誰かが損をする、という仕組みを永続的に維持することで、「中核」は益々巨大になっていくのです。一握りの帝国がルーマニアやカンボジアなどの安価な労働力を活用して生産し、高い収益を上げる「仕組み」を維持することは、まさに、この「中核」と「辺境」の搾取の関係に他ならないのです。それを後押しするのは国家ではなく、市場の力なのです。それを支えるのは、帝国がつくる「仕組み」なのです。

    ここ数年ばかり、先進国だけではなく、中東などでも、労働運動や賃金格差、硬直化した社会体制などに対する労働運動、ナショナリズムを換気する運動が高まっていますが、これはこのような「仕組み」の元で、労働者への圧力、搾取がより高まったことが理由の一つかもしれません。



    第三点目に、この様な多国籍企業で「使う人」と「使われる人」の実態が描かれている点です。「使う人」とは、ごく少数のグローバルエリートであり、搾取の「仕組み」を作ることに長けた人々です。The Atlantic MonthlyのThe Rise of the New Global Eliteという記事の中でも指摘されていますが、グローバルエリート達は、多国籍な環境で似た様な教育を受け、人種、性別、国籍が異なるにも関わらず、教育、趣味、生活レベル似通っています。また、メリットクラシー(能力主義)的であり、高い勤労意欲を持ったプロフェッショナル(専門職)でもあります。私が先日出版したノマドと社畜の中で紹介した国境を越えて働くハイパーノマドの人々も、この様なグローバルエリートの一員です。

    この様な人々が、「仕組み」を牛耳る人々であり、この中に入れない人々は、「仕組み」を作る側にはなることはなれず、「使われる側」として低賃金に甘んじなければならないのです。本書では、日本企業の中にも、帝国化する企業の中には、このようなグローバルエリートを採用していく企業が増えていくはずだと指摘しています。本書では日本人が「仕組みを作る側」になるにはどうしたら良いか、というアドバイスも書かれています。キャリアの未来を考えたい方には一読を勧めます。




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